–お二人は上司部下で参加されましたが、一緒に受講することに抵抗や葛藤はありましたか?
私たちはコミュニケーションを取っているほうだと思っていたのですが、上層部からはまだ足りないと言われていました。研修に参加することで、日常業務から離れて共通の課題を話し合う良い機会になると考えました。向かうべきゴールは共有していたつもりでしたが、研修を通して感じたのは、方法論(やり方)を議論していないかったんだと。日頃の業務ではやり方の議論にはなかなか時間が割けないですからね。
研修に参加することで、Bさんが何に悩み、なにが得意でなにが課題なのかをはじめて理解しました。彼が不得意なことに向き合い、克服する過程も一緒に経験できました。さらには自分自身の課題も見つかったんですよ。今までは自分が現場に出て育成にもがっつり携わってきましたが、これからはBさんに現場を預けようと心が決まりました。私は彼のサポートに徹し、時には「悪役」を演じたりしようと。組織を大きくするためには全部自分で背負いきらないことが大切だと分かりました。この意識の変化は大きな収穫です。
研修では、別の参加者を通してBさんにメッセージを伝えることができました。当事者同士ではギクシャクしてしまうことも実際はありますが、研修内での課題を通じて、お互いのあるべき姿をぶつけ合うことができたのは、現場のマネジメントにとても活かせています。普段の会話ではその場の対応に追われてしまって、あるべき姿を議論することはなかなかできませんからね。また他者から意見をもらうことはとても新鮮でした。ヒントをたくさんもらいましたよ。

–他の会社の管理職と意見交換することでることでどんな気づきがありましたか?
管理職になったタイミングが同じだった方がいたので、同じような悩みを抱えているという安心感や親近感がありました。「そのやり方ではしんどい、無理ですよ」と言われたときは、なぜか肩の荷が下りて気持ちが楽になったんですよ。気持ちを理解してくれる仲間から言われたアドバイスは、上司から言われるより心に響くものがありました。仲間ができてよかったとしみじみ感じます。
仲間から沢山アドバイスがもらえましたし、親身になって一緒に考えてもらえた、まさに幸せな一年でした。
–いかに学びを日常に継続させていけるか」というテーマで毎回『Domore Do less』を 10か月していただきましたが、実際にやってみていかがでしたか?
『Do more Do less』は研修で学んだものを定着させるための演習ワーク。日頃の行動の中で「より増やすこと、減らすこと」と具体的に書き出し実践する。
最初はとにかくしんどかったです。職場に戻ってやってみようと思っても、研修が終わると意識が薄れてしまうことも多々ありました。日頃マネジメントでいろいろ試してみようという意識はあまりないですからね。ただし、やっていくうちにだんだんと意識ができるようになっていきました。習慣化というのでしょうか。こういうワークは、長い期間かけてやることに意味があると実感しています。自分一人では振り返りの時間は取れません。受講した仲間と一緒に振り返る、この時間がなければ本当の意味で身につかなかったと思います。始まった当初は長いなと思いましたが、終わってみたらあっという間でしたね。

–事業のミッション・戦略といった未来の打ち手やあるべき姿の検討は、上司と部下で参加することで促進されましたか。
リフォーム事業をゼロから作ってきましたが、5年後に事業がどうあるべきか、メンバーに展望を示せずにいました。人材育成と比例して事業を創造していくのはとても大変でした。そんな中で研修に参加し、Bさんと将来について思考する状況を作れたのは、とても意味がありました。事業を創造するためにはまずセオリーがあるのを学び、自信を持って思考できるようになりました。
慢性的に人手が足りないと常に思っていましたが、研修の中では「今いるメンバーをどう育てていくか」、「達成支援や協働体制をいかにしていくか」を実践形式で学ぶことができました。管理職のやるべきマネジメントを体系的に学んだことは、今後の事業の戦略に大いに役立ちました。未来に向かってAさんと「こんな風になれたら良いね」と夢を語り合うこともできるようになりました。
–コロナ渦での研修でしたので、当初の予定だった合宿研修がオンラインに変わりました。受講者の企業訪問合宿は1回しかできませんでしたが、行ってみて何か発見はありましたか?
事業を発展させるためにいつかはショールームを作りたいと思っていたので、Cガスさんの事例はとても参考になりました。「地域住民はすべてお客様」と考え、集まれる場所を作るという設計コンセプトや地域の防災拠点という考え方は、目から鱗でした。実際に見て肌で感じることができたのは今後の事業拡大の参考になると思います。またセキュリティや宿直の部屋、福利厚生など、普段は表に出ないことを見せてもらえたのも良かったですね。将来の組織作りのヒントをいただきました。
-(参加者の皆さんに聞くのもおかしいかもしれませんが)受講料は高いと思われますか?
最初に聞いたときは、高いと思いました。上層部からは、経費で落ちなければ自腹で払うと言われたんです。気負わずにほんのちょっとのことでもいいから、何か持ち帰ってくれればいいと。あれはうれしかったですね。Aさんとの日頃の会話でも、研修で学んだことはこんなことだったとか、時には「研修で学んだことと違うんじゃないか」と話したりします。この間も評価のタイミングでこの議論になりました。軸を使って修正することを研修で学んだので、お互いすぐに納得できました。部下にもしっかりフィードバックできましたよ。今までは評価がズレたときにはけんかになることもありましたからね(笑)
今まで現場第一主義でやってきて、業績に重きを置いてきた分、人の育成がおろそかになっていました。そのしわ寄せが組織の脆弱さに現れており、リーダーが育っていない状況は致命的でした。誰をどう見いだしてその道筋を引いてあげるか、これは現場とは違う環境整備だと思います。今後は若いうちからマネジメントやマーケティングなどいろいろ勉強させ、育てていきたいと思っています。
-次期生に向けてのメッセージをお願いします。
課長と部長は組織で言うと両輪です。どちらかの回転が強すぎても空回りしてしまいます。今までもそれなりに回っていると思っていましたが、この研修を通して本当の意味でかみ合ってきたと思います。この二人を鍛えたい、担わせたいと思うコアメンバーをぜひ選出し、選ばれた人は自信を持って受講してください。どんな人にも学びがあると思います。
研修での課題に向き合いながら、同時に自組織の課題にも向き合いました。現場を離れてマネジメントと向き合う時間はとても良い経験になると思います。
